弁護士監修メディア

投資詐欺の被害金は確定申告できる?雑損控除の考え方

この記事の結論

  • 投資詐欺でだまし取られたお金は確定申告で雑損控除の対象になるのか、国税庁の取り扱いをもとに解説します。
  • 対象になる損害・ならない損害の違い、例外的なケース、税務以外に検討したい回収の選択肢を整理します。
  • 本記事では、雑損控除とは何か/なぜ投資詐欺の被害金は雑損控除の対象外なのか/雑損控除が使えない場合に混同しやすい制度 を扱っています。

最終更新日: 2026年9月14日

緊急性が高い場合は迷わず公的窓口へ

お金をだまし取られた直後など緊急性が高い場合は、警察相談専用電話(#9110)や消費者ホットライン(188)にご相談ください。事件性が高い場合は110番です。

結論として、投資詐欺でだまし取られた被害金は、原則として確定申告の雑損控除の対象になりません。国税庁は、雑損控除の対象となる損害の原因を災害・盗難・横領に限定しており、詐欺や恐喝による損害は対象外としています。「少しでも税金の面で取り戻せないか」と考える方は多いのですが、まずこの原則を正しく理解しておくことが重要です。本記事では雑損控除の考え方と、税務以外に検討できる選択肢を整理します。

雑損控除とは何か

雑損控除は、所得税法第72条に基づく所得控除の一つで、災害・盗難・横領によって資産に損害を受けた場合に、一定の計算式で算出した金額をその年の所得から差し引ける制度です。条文はe-Gov法令検索の所得税法で確認できます。制度の趣旨は、予期せず外部から生じた損害について税負担を調整することにあります。

なぜ投資詐欺の被害金は雑損控除の対象外なのか

対象になる損害の原因

国税庁のタックスアンサー「No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」では、雑損控除の対象となる損害の原因を「災害」「盗難」「横領」の3つに限定しています。詳細は国税庁タックスアンサーNo.1110で確認できます。

対象にならない損害の原因

同じページでは、「詐欺」や「恐喝」による損害は雑損控除の対象にならないと明記されています。これは、盗難や横領が被害者の意思に関わらず一方的に財産を奪われるのに対し、詐欺は被害者自身が(だまされた結果とはいえ)自らの意思で金銭を交付しているという法的な整理に基づくものとされています。投資詐欺で「儲かる」と信じて自ら振り込んだお金は、この「詐欺」による損害に該当するため、原則として雑損控除の対象外となります。

例外的に「盗難」として扱われるケース

警察官や金融機関職員を装ってキャッシュカードをだまし取り、本人の知らないところでATMから現金を引き出す「キャッシュカード詐欺盗」のように、財産の移転自体が本人の意思に基づかない手口は「盗難」に整理され、雑損控除の対象になり得るとされています。一方、投資名目で自ら振込・送金を行った場合は、たとえ相手にだまされていたとしても「詐欺」による損害として扱われる点に注意が必要です。個別の事案がどちらに該当するかの判断は、最終的に税務署や税理士への確認が必要です。

ケース雑損控除の扱い(原則)
地震・火災などの災害で資産に損害を受けた対象になる
空き巣・置き引きなどで金品を盗まれた対象になる
従業員や親族に財産を横領された対象になる
警察官を装われキャッシュカードを渡し、本人の知らない間に引き出された(キャッシュカード詐欺盗)「盗難」として対象になり得る
「必ず儲かる」と信じて自ら投資名目で振り込んだ(投資詐欺)「詐欺」として原則対象外
脅されて金銭を交付した(恐喝)原則対象外

表のとおり、財産の移転が「本人の意思に基づかず一方的に奪われたか」「本人が(だまされたとはいえ)自らの意思で交付したか」が、雑損控除の対象になるかどうかを分ける大きな境界線になっています。

雑損控除が使えない場合に混同しやすい制度

必要経費・譲渡損失との違い

投資詐欺で暗号資産や未公開株などの名目でお金を交付したケースでは、「投資の損失」として他の所得と損益通算できるのではないかと考える方もいますが、そもそも取引の実態がない詐欺の場合、税法上の資産の譲渡や取引とは扱われず、損益通算の対象にもなりません。この点は個別の取引実態によって判断が分かれるため、確定申告書を作成する前に税務署や税理士に相談することをおすすめします。

医療費控除など他の控除との混同に注意

詐欺被害によるストレスで通院した場合の医療費は、通常の医療費控除の対象になり得ますが、これはあくまで実際に支払った医療費についての制度であり、だまし取られた投資資金そのものとは別の話です。控除の種類を混同しないよう整理して申告することが重要です。

税務以外に検討できる現実的な選択肢

雑損控除が使えないとしても、被害金の回収に向けて検討できる手段は他にもあります。まず、加害者に対する損害賠償請求権には民法上の消滅時効があるため、時効が近づいていないかを確認することが重要です。考え方は投資詐欺の損害賠償の時効の解説で整理しています。また、警察への被害届の提出は口座凍結など被害拡大の防止につながる場合があり、投資詐欺の被害届の出し方で手順を解説しています。同種の被害者が多い事案では、費用や証拠を共有できる被害者の会・集団訴訟に参加する際の注意点も選択肢の一つです。

確定申告をする際に注意したいこと

「雑損控除が使えないなら他の項目に無理に計上する」という対応は、後日の税務調査で否認され、追加の税負担が生じるおそれがあるため避けるべきです。詐欺被害の税務上の扱いについて疑問がある場合は、最寄りの税務署の相談窓口や税理士に、被害の経緯(勧誘の内容、金銭の交付方法、被害届の有無など)を具体的に説明したうえで確認することをおすすめします。確定申告の一般的な手続きは、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kakutei.htm)で案内されています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 詐欺の被害額を証明できれば雑損控除は認められますか。

A. 証明の有無にかかわらず、国税庁の取り扱い上、詐欺による損害はそもそも雑損控除の対象原因(災害・盗難・横領)に含まれていません。証拠が十分でも対象外となる点に注意してください。

Q2. 暗号資産の投資詐欺で騙し取られた分も同じ扱いですか。

A. 資金交付の形態が「詐欺」による場合は、暗号資産であっても同様に雑損控除の対象外となるのが原則です。個別の取引実態によって判断が変わる可能性があるため、税務署や税理士への確認をおすすめします。

Q3. 税務署に相談すれば被害金を取り戻せますか。

A. 税務署は税の申告・納税に関する相談窓口であり、被害金の回収や返金を行う機関ではありません。回収については警察や弁護士など別の窓口への相談が必要です。

免責事項

本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務判断や法的判断は税理士・税務署・弁護士等の専門家にご相談ください。特定の申告内容の可否を保証したり、被害金の回収を保証したりするものではありません。個別の状況については、国税庁(https://www.nta.go.jp/)、国民生活センター(https://www.kokusen.go.jp/)、法テラス(https://www.houterasu.or.jp/)等の公的機関にご相談ください。

よくある質問

188・#9110はどちらも全国共通で、地域に応じて最寄りの窓口へ自動でつながります。
窓口により対応時間は異なります。緊急性が高い場合は110番もご検討ください。
公的窓口は一般的な助言・案内が中心で、返金を保証するものではありません。被害回復の手続きは弁護士に相談できます。

関連記事

相談予約 LINEでチェックリストを受け取る